読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

小学生だったおれが 〜乳これ〜 で学んだこと


「乳これ」とは「牛乳びんのフタこれくしょん」の略です。
id:Oppai__perorist 氏のエントリに乗っかってみました。
彼はこんなIDですが、乳これはおっぱいとは無関係です。

牛乳びんのフタ=????


うちの学年では牛乳びんのフタのことを「ギュウベン」と呼んでいました。
牛弁=牛乳びんの弁 の略と思われます。


遊び方はいわゆる『メンコ遊び」に近いものだったと思いますが,普通メンコ遊びと言えば,

  1. 地面にめんこを置く
  2. 別の者が別のめんこを叩き付ける

wikipedia:めんこ

のようなルールを想像すると思います。しかしギュウベンは直径が3.5センチ程度と小さいためか,手でたたき付ける遊び方はされていませんでした。

基本的な遊び方

  1. 掛け金としてギュウベンを数枚ずつ差し出す(1〜4枚が多い)
  2. 床に寝転び,ギュウベンを表向きに並べる
  3. 息を使ってギュウベンを裏返す
  4. 自分のターンですべて裏返すと勝ちとなり,場にある全てのギュウベンの所有権を得る

息を使うところが典型的なメンコ遊びとは違っています。
ちなみに,このルールは代表的なもので,勝負する両者の合意により決定されます。たとえば息を吹きかける回数は1〜3回程度と幅があり,熟練者ほど少ない回数での勝負を好みます。相手の成功率が低くなるからです。
また裏返した分だけ所有権を得られるルールもあり,勝負と言うよりトレードに近い感覚です。その場合は掛け金の枚数が多くなる傾向があり,また息をかける順番がかなり重要になります。

さらにゲームの要素として,息のかけ方,息かけ時のギュウベンの並べ方は重要です。
息のかけ方は,「バッ!」とツバを飛ばすように吐くやり方が主流でしたが,場のギュウベン枚数が多い場合は「フーーーッ」のような具合に長く吐くやり方が,より広範囲のギュウベンを裏返すのに効果があったように思います。
ギュウベンの並べ方は人それぞれで,たとえば6枚が場にあるとき,
f:id:bioweb:20130908013339p:plain,w360
陣形の例

2x3の長方形に並べる人や,ピラミッド型に並べる人もいました。
(息は画面下から吹きかけるものとします。)


長くなりましたが,このような勝負,というか博打に我々は日々没頭していたのです。
ギュウベンを巡る喧嘩や窃盗・・・それどこの世紀末
今考えると,教師や保護者から何らかの規制があっても良さそうですが,どの程度実態を把握していたのでしょうか・・・。

ギュウベン経済のルール


当初,我々は給食で手に入るギュウベンだけが出回っていました。基本的には1日に1人1枚,周りの女子から譲り受け,さらに余った牛乳を飲んでも1人が一度に手に入れられる枚数はたかがしれています。


ここでは常に供給量が一定のため,ギュウベンの価値は安定していました。


ところがある日,誰かがどこかから他社製のギュウベンを大量に仕入れてくると,ギュウベン経済の価値感は一変します。
給食ギュウベンの価値が下がり,今まで所有枚数の多さだけが富豪と貧民を分けていたところへ,「珍しい」という新しい価値が生まれました。


需要と供給の関係において,供給が少ないものの価値が上がる「神の見えざる手」はこのとき学んだと言っても過言ではありません。


さらには「番なし」と呼ばれる更に希少価値の高いギュウベンも登場してくると,給食ギュウベンの価値はほぼなくなり,掛け金としても認められなくなっていきます。
我々は価値が低いことを「ダサい」と表現していました。
番なし とは,工場で牛乳びんに蓋する前のキャップでです。製造日時を示す番号の打刻がなく,取付前のためエッジが曲がっていません。
一般市場には出回らないため,普通にビン牛乳を飲んでいては手に入らないものです。



f:id:bioweb:20130908091150j:plainf:id:bioweb:20130908091430j:plain
番号の打刻のない「番なし」。未使用のため固くひっくり返しづらいです。
よく見ると右は番号を削った偽物?




ギュウベン経済の栄枯


「番なし」とは冒頭のエントリで言うところの「タケッパ」のことです。牛乳びんのフタには製造日(?)を示す数字が打刻されていますが,こいつはビンにフタをする前の未使用品のため,数字の打刻がありません。「番なし」の由来はそこにありそうです。

「未使用品」というのはやはりコレクター魂をそそるのか,非常に高い価値を持っていました。
「番なし」は大変珍しく,所有者はそれだけでセレブ扱いでした。
所有者は所有者同士,「番なし」だけを掛けて取引(博打)をしていたため,持たざる者は勝負にも参加できず,所有のチャンスすらありませんでした。
困ったことに,番なしを手に入れるために一部の 貧民 生徒が窃盗に走るという事件が頻発するくらい,我々にとっては価値の高いものでした。


経済格差の固定が治安を揺るがしたのだと今では理解しています。



そしてある日,非所有者が「番なし」ギュウベンを手に入れる方法が発明されました。
冒頭のエントリにもある「牛乳会社にお願いの手紙を送る」という錬金術です。

封筒に手紙で
「いま学校でフタ集めが流行っています。貴社のフタのデザインはすばらしいので大人気です。僕も手に入れたいので是非送って下さい」
と適当にお世辞を述べつつ,返信用の封筒と代金代わりの切手を入れて送ると,高い確率で「番なし」を大量にもらえたのです。

この錬金術を発明 (親の入れ知恵) した僕は,翌日学校で一躍大富豪の仲間入りを果たします。あれほど注目されたことは人生で後にも先にも他にないんじゃないかと思います。
しかし,所詮は錬金術で大量にゲットしただけの成金。富を築き維持する実力 (勝負に勝つだけのスキル) もなく,手に入れた番なしコレクションは徐々に目減りしていきました。

当然のように錬金術は瞬く間に学年中に普及し,「番なし」はすぐに誰でも持てる通貨として出回るようになります。
その分,流通量も激増し,価値も下落しています。

目減りしたコレクションを維持するため,さらに牛乳会社に手紙を書き,さらに市場へ供給し・・・。

供給量の増加により,市場における通貨価値が下落していく様子が見て取れました。これ,インフレですよね。




廃れるのは一瞬


バブル崩壊は突然やってきました。

ある生徒が牛乳会社へ番なしギュウベンの調達を依頼したところ,番なしの調達には成功したものの,「今後はこのような依頼には応じません」という手紙が同封されていたらしいのです。
この情報が出回った直後,ギュウベンは一気に廃れてしまいました。
どういったメカニズムでそうなったのかはよくわかりませんが,「牛乳会社に迷惑をかけている」ことから教師によって手紙を送ることが禁止されたのかもしれません。
「珍しい価値を持ったコレクションが新たに供給されない」という雰囲気になったのかもしれません。




その後ほとんどの友人が「捨てた」と言っていましたが,なんとなく大事に残していたコレクションを公開します。
もう15年以上前のものです。
こうやって並べてみるとなんかかわいいですね。



f:id:bioweb:20130908002410j:plain
これがいわゆる「番あり」。
牛乳びんのフタとしてはめられていたものです。



f:id:bioweb:20130908002402j:plain
f:id:bioweb:20130908002406j:plain
こっちが「番なし」。
工場未使用品のため,日付の打刻がありません。「見本」と判が押されたものもありますね。











◝(●˙。​˙●)◜