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分子生物学のセントラルドグマ・・・DNA・RNA・タンパク質の関係

Science

【再掲】
このエントリは
はてなダイアリー
のエントリ(もう消えていますが)を読んで思いつきで書いた記事の再掲です.

生物学を勉強している大学生として,「遺伝子」「DNA」などの生物学用語がバズワードのごとく氾濫している状況がなんだか気持ち悪くて書いた記事です.
毎回そうなのですが,途中で飽きて尻すぼみの記事になってますね.



DNAについて生物学的な解説をしてみたいと思います。といってもこれを見る人がどれくらいの知識を持っているかわからないので、とりあえずPCに喩えながら説明してみます(必然的にかなり乱暴な喩えになります。専門の方、お許しを。)。一応、中学以来まったく生物の勉強などしていない、という人にもわかるように書きたいっす。


「DNAに生物のすべての情報が書き込まれていて、DNAは究極の個人情報だ」みたいに言うけれど、その遺伝情報は生体内でどう使われているのでしょうか?
僕は大学でこれを習ったときになぜか「遺伝子なんてどうってことねぇな」と思いました。

まず用語から

DNAと遺伝子とゲノムと染色体のちがい

どれもあまり区別されていないような気がしますので、解説しておきます。
喩えるならば、染色体=ハードディスク、DNA=ハードディスクのプラッタ、遺伝子=ファイル、ゲノム=ディスク内のデータすべて(ディスクイメージ?)になると思います。
データは基本的に染色体内に納められています。染色体は様々な部品でできており、これを分解するとDNAという長い鎖のような物質が現れます。これがデータストレージの本体です。DNA内にはデータが、遺伝子いうファイル単位で保存されています。ちなみに、ハードディスク内のファイルと同様に断片化しています。デフラグ機能はないみたいです(笑)

DNA(デオキシリボ核酸) wikipedia:デオキシリボ核酸

簡単に言うと、2本の長い鎖です。2本の鎖がらせん階段状に絡まった画像をよく見ますね。
化学的には鎖はそれぞれヌクレオチドと呼ばれる物質が多数並んでできています。
*1
これが2本逆平行に並び、2重らせんを作ります。

4色に塗り分けてあるところが塩基です。4種類(ATCG)あり、これの並び方(塩基配列)がDNAに保存されているデータそのものになります。デジタルだと0と1で情報を示しますが、同じようにDNAではこのA、T、C、Gの4つの組み合わせで情報を示します。文字が一列に並んでデータを紡いでいる点は同じです。

この逆平行2重らせんの構造には生物学的に大きな意味があります。4色に塗り分けた塩基はかならず同じ組み合わせで向かい合うことになっています。たとえばの向かい側には必ずがきます。同じようにが向かい合います。

RNA(リボ核酸) wikipedia:リボ核酸

さらにPCで喩えるとメモリのようなものでしょうか。DNAから読み取ったデータはRNAに一時的に保存されます。
化学物質としてはDNAによく似た構造をしていて、データの保存様式も同じです。ここでは、DNAに比べて不安定でそのうち分解されてなくなる。DNAとは違って1本だけで存在する。という点だけにしておきます。

タンパク質 wikipedia:タンパク質

これが一番名前から受ける印象とは違うのでややこしいのですが、「タンパク質=肉」という発想はとりあえずその辺においといてください(笑)
基本的にタンパク質は細胞の中に溶けているツブツブです。塩や砂糖が水中に溶けているのと同じように、タンパク質も水に溶けています。このタンパク質のツブツブが何をするかというと、1種類のタンパク質があれば、それは1つの化学反応を制御(触媒)します。つまり、タンパク質1種類で、体内における1つ(あるいはそれ以上)の機能を提供します。
PCでいうとプログラムの関数とか、かな?1つだけでは大したことはしないんだけど、それを組み合わせていろいろなことができるというわけです。

分子としてはDNAやRNAと同じように1本の鎖でできています。DNAやRNAヌクレオチドという化学物質が多数連なった物でしたが、タンパク質の場合はアミノ酸という化学物質が多数連なったものです。アミノ酸っていうのもなんだかいろいろと誤解の多そうな物質ですが、アミノ酸がずらずら並んだ物がタンパク質、と覚えておいてください。

DNA上の遺伝情報が働く流れ

遺伝子の情報が働くまでの流れのことを「分子生物学セントラルドグマ」というそうです。
まず、DNA上の遺伝子を読み取り、RNAに写し取ります(転写)。つぎのこのRNA上に写し取った遺伝子をもとに新しいタンパク質を製造します。この製造過程を翻訳と呼びます。
さきほど1つの遺伝子は1つのファイルに相当すると書きましたが、1つの遺伝子からは1種類のタンパク質が作られます。1種類のタンパク質は1つの機能を提供しますから、1つの遺伝子は1つの機能を提供することになります。
逆に言うと、これが遺伝子の定義です*2

まとめ。

DNA→RNA→タンパク質
遺伝子は1つのタンパク質をコードしている設計図であり、まずこれをRNAにコピーをとり、これをもとにタンパク質を製造します。この流れをセントラルドグマといいます。
参考→wikipedia:セントラルドグマ

1 DNA→RNA

ここまででDNAからRNAに設計図を写し取って、という話をしました。DNAとRNAは化学的にはほとんど変わりません。では何故、わざわざそんなことをするのでしょうか?
DNA上にある遺伝子は通常、1つしかありません。これは「遺伝子1つを破壊すれば1つ機能が失われる」ということでもあるのですが、単純に量の問題があります。遺伝子1つに対して、必要となるタンパク質は何十万個にもなりますから*3、これをいちいち原本のDNAを読んでは作って・・・を繰り返していたらとても間に合いません。そこでまずは遺伝子のコピーをたくさん作り、そこからさらにタンパク質を作ることによって効率よく必要なタンパク質をそろえようというわけです。そのための一時保存メディアがRNAです。
また、場所の問題もあります。DNAはいつも細胞の核という場所にありますが、製造したタンパク質が必要な場所は核だけとは限りません。そのためにデータだけをRNAに書き写して持ち出し、現地で必要なだけ作ろうというわけです。

ではそのDNA→RNAの分子機構を見てみましょう。ちなみにこの過程を転写といいます。文字通りのコピーです。


図を見てください。先ほどの図では2本のDNA鎖が塩基(色つき棒)を向かい合わせてくっついていました。これの下側の鎖と同じ物をコピーして作りたいとします。先ほど述べたように向かい合う色の組み合わせは決まっているので、下の塩基配列と同じ物がほしいなら、上の塩基配列にあわせて新しく塩基を並べていけば、下と同じ物ができるはずです。
こうしてDNAを原本にRNAを作りました。これを特にメッセンジャーRNA(mRNA・伝令RNAといいます。 wikipedia:伝令RNA
完成したメッセンジャーRNAは写し取ったタンパク質の設計図が必要となる場所へ運ばれ、次の過程で「翻訳」されます。

2 RNA→タンパク質

セントラルドグマの後半は設計図のコピー(メッセンジャーRNA)からタンパク質を作る過程(翻訳)です。これも文字通り「翻訳」で、転写とは違って文字が変化します。DNAやRNAは構成単位(文字)がヌクレオチドでしたが、タンパク質はアミノ酸で構成されているのでそう呼んでいるわけです。

先ほどの転写ではヌクレオチドからヌクレオチドを作るので簡単だったのですが、翻訳の場合はそのまま写すわけにはいきません。ヌクレオチドが4種類しかないのに対し、タンパク質に使われるアミノ酸は20種類あります。1ヌクレオチド→1アミノ酸では文字数が足りません。そこで翻訳では図のように3ヌクレオチド→1アミノ酸が対応します。ヌクレオチドは4種類ですから、3つ並べれば4*4*4=64種類のアミノ酸が指定できるはずです。しかしアミノ酸は20種類しかないので残りの44通りは同じアミノ酸を指定していたり、その他の命令(翻訳開始や、翻訳終了)を指定します。
メッセンジャーRNAを前から順番に3文字ずつ読み取り、それに対応するアミノ酸を1つ運んできては数珠のようにつなげていきます。こうしてできるタンパク質は数個~数千個のアミノ酸をつなげた分子になります*4
アミノ酸には20種類あるので、できあがるタンパク質の種類は莫大な数に上ります(3アミノ酸でも8000通り)。このアミノ酸の並び方でタンパク質の性質=機能が決まるわけです。

関係ないけどコラーゲンもタンパク質です。単なるアミノ酸の重合体です。食ったら普通に分解(アミノ酸ちょい手前くらいまで)されると思います。

3 タンパク質の働き

タンパク質とはアミノ酸が多数連なった物でした。これが1つの機能を持つわけですが、具体的にどう働くのでしょうか。
これは分子生物学というより生化学とかの分野になる気がするのですが、軽く。

タンパク質の性質は含まれるアミノ酸とその配列によって決まります。タンパク質分子は本来、長い鎖の形をしていますが、体内では丸く折りたたまれてそれぞれ独自の表面構造を持つようになります。この表面構造によってタンパク質の機能が発揮されるのですが、この折りたたみ方を決めるのがそれぞれのアミノ酸です。20種類のアミノ酸はそれぞれ大きさ・電荷などが違います。プラスに帯電しているものもあればマイナスに帯電しているものもあります。プラスとマイナスは引き合うので分子の中で近づこうとします。逆にプラス、マイナス同士は反発するので、それぞれの力のバランスがもっとも安定するところに落ち着き、分子の形が決定します。

折りたたまれたタンパク質分子は独特の表面構造を持ち、この表面構造によってほかの分子を捕らえます。このとき捕らえる分子は表面構造によって別々の分子を選ぶので、タンパク質の種類によって捕らえる分子が異なり、その後制御していく化学反応が様々なバリエーションを持つことになります。

まとめ

結局、遺伝子によって決まるのは体内で起こる化学反応です。
生き物は化学反応によって成り立っているのは確かですが、化学反応なんかに人生とか決められるわけがない。どう考えてもその後の学習とか環境とかの影響の方が大きいだろう。そう思って冒頭の「遺伝子って大したことないな」と思ったわけです。

関連

DNAとか遺伝子について勉強したい方へ
Wikipediaを読めばかなり詳しくなれると思いますが、かなり細かく書いてあるので最初は簡単そうな本を1冊読むのがお薦め。ただし高校の教科書は分子生物学的な内容をほとんど含んでいない(化学的な説明を入れることができない)のであまり役に立たない気がします。
個人的にはネット上のバイオは初心者には優しくない印象。

とりあえずWikipediaで今回書いたことに直接関係あるところ

wikipedia:ヌクレオチド
wikipedia:メッセンジャーRNA
wikipedia:DNA
wikipedia:遺伝子
wikipedia:ゲノム
wikipedia:染色体
wikipedia:アミノ酸
wikipedia:タンパク質
wikipedia:セントラルドグマ
wikipedia:転写_(生物学)
wikipedia:翻訳_(生物学)
wikipedia:コドン
wikipedia:コラーゲン
・・・おおすぎ。

参考図書


分子生物学の入門書としてなかなかイケてます。内容的にはこれの上位版にあたるTHE CELLのほうが有名で内容もしっかりしているのですが、こっちのほうが文字が大きくて読みやすいので好き。内容もほどほどだしオススメ。ただしある程度(高校くらい?)の物理か化学の知識が理解できることを前提に書いていると思います。


DNAの分子機構を図ではなく映像で見ることができます。これ大学の授業でつかったら講義3回分くらいは節約できる気さえする。ここに書いてあることはこれを見ればすぐわかります。ナレーションがいちいちな気もしますけど、映像だけで十分わかるので超オススメ。


言わずとしれたベストセラー。セントラルドグマ分子生物学の研究手法などにも触れているので、なんとなく生物学を楽しんでみたいという人にはいいかも。
ただし学問的には色々とアレなのであくまで物語として。

*1:専門の方へ。ヌクレオチドの糖は5員環だとか、結合部位がおかしいとか、細かいことを気にしてはいけません。○にすればよかった...

*2:でした。が正確な表現です。現在ではいろいろと修正されていますが、まぁいいや。

*3:適当です。数は知らないけどとにかくいっぱい

*4:アミノ酸の平均分子量は110なのでかなり大きな分子になりますね。